当ブログでは、歴史の教科書にも登場するような人物の贈答にまつわる物語を一部ご紹介します。
●清少納言へのプレゼント
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餅餤(へいだん) |
左図の「餅餤(へいだん)」は、奈良から平安時代に中国からもたらされた唐菓子のひとつで、主に宮中の饗宴などで用意されました。「餅餤」は、鵝(がちょう)や鴨の子と野菜を煮たものを、餅(もち)で包み、四角に切ったものです。
さて、この「餅餤」ですが、清少納言へのプレゼントとして藤原行成が梅の花の枝を添えて贈りました。この贈り物に対し、清少納言は紅梅を添えて「自分自身で持ってこないのはひどく冷淡に思いますが?」と、「餅餤」に「冷淡」をかけて返事を送りました。
その後すぐに行成自身が清少納言のところに来て、機知ある返事をほめたといいます。
●巨大な鏡餅
鏡餅模型(展示場より) |
正月に鏡餅を親族や家族間で贈る風習は他にもみられますが、こんな巨大な餅がやってくるのは天下を治める将軍家くらいではないでしょうか。
●対外交渉と菓子
幕末の対外交渉では、異国人の接待の贈り物として菓子が重視されていたようです。初代米国総領事ハリスは、日米修好通商条約の交渉にあたり、十三代将軍家定に謁見を許されました。領事館のあった下田から江戸に入った翌日将軍から宿所に菓子が詰められた4段重が届けられました。幕府側の記録などによると、箱はひのきの四段重で、大きさは縦1尺5寸(約45cm)、横1尺3寸(約39cm)、中身には有平糖、落雁、羊羹、饅頭などが数多くつめられていたといいます。
ハリスは、菓子の美しさに感激し、「私は、それらを合衆国に送ることができないことを残念に思う」と日記に記しています。
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ハリスへの接待菓子再現 写真提供:たばこと塩の博物館 模型作成:福留千夏 協力:虎屋文庫 |
なお、製造したのは幕府御用菓子屋の宇津宮内匠(うつのみやたくみ)で、代金は高額で65両であったといわれます。嘉永6年(1853)にロシアから来航したプチャーチン一行にも、長崎の奉行所が凝った細工の菓子を贈っていました。
●馬琴と長寿祝いの饅頭
『南総里美八犬伝』ほか多くの小説を著した滝沢馬琴は、年中行事や儀礼の際に たくさんのお菓子を用意し、親族ほかへ配っていました。馬琴は、文政7年(1824)妻お百の還暦祝いに「寿字の饅頭」を数百個用意し、親族に届けた記録があります。『馬琴日記』によりますと、お百の古稀祝いでも親族などに配られ、祝膳に添えられたことがうかがえます。
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薯蕷饅頭 白(寿焼印付) |
赤坂本店および赤坂菓寮におきましては、滝沢馬琴の「和菓子の贈りもの」に因み、上記の商品を限定販売致します。
資料展の詳細は、とらやホームページ をご覧ください。
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薯蕷饅頭 白(寿焼印付)
※「山芋」を含む
価格:473円
販売期間:11月1日(金)~30日(土)
販売店:赤坂本店・赤坂菓寮
※数に限りがございます。売切れの際はご容赦ください。
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このほかに、会場となる虎屋ギャラリーには、甘い贈りものにまつわるさまざまなエピソードをご紹介します。皆さま、是非、この機会にぜひ虎屋ギャラリーにお運びください。
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第76回虎屋文庫資料展 歴史秘話20「和菓子の贈りもの」展
会期:2013年11月1日(金)~11月30日(土)
時間:10:00~17:30
場所:東京都港区赤坂4-9-22 虎屋ギャラリー(虎屋ビル2階)
入場無料・会期中無休
ギャラリートーク:毎週月曜10:30~(無料)
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虎屋文庫
電話:03-3408-2402
E-MAIL:bunko@toraya-group.co.jp